弟子のSです

武術の稽古日誌

考え事

あなたの内側はどこですか?

前回の記事に続き剣術の稽古の解説をせよとの課題をいただいた。それは次のような稽古であった。 開いた左手の上に剣を載せ、コの字型に右手を添えて剣を立てて構える。安定と不安定の中間にあるこの状態に剣を保持し、意思でなく剣の落下に導かれて斬るよう…

武術はジャズかもしれない

(PCで見たとき非常に重いと教えてくださった方がいて、1ページあたりの記事数を半分にしました。ご指摘ありがとうございました。) 先日師に「礼や師弟という概念を理解しておらず、重要な師の話を遮って自分の関心のあることだけを聞こうとする」と言われ…

報酬系の是非

去年の今頃は「出稽古だーー!!」とカフェでバイトしていて途方もなく忙しく、お祭り騒ぎのような毎日、シフトを終えて飲む一杯のアイスコーヒーは極上の美味であった。しかし、このわかりやすい報酬系の至福は何かちがう、武術とちがう、という感覚が常に…

追求は解放なこと

これだけやっていてとぼけるな、と言われるのだが、たとえば、武術的な力量についての相対的な話、誰と誰のどちらが上か、みたいな話が私にはどうも飲み込みにくい。師の頭の中では、武術家としての視点から、ご自分が誰より上で誰より下かという位置付けが…

未だ見ぬ蹴り封じ

打撃対策についてはそれなりに怪我も重ねてきたが、痛い目をみれば動物なら何とかしようとするはずという師の予測とはうらはら、いまだ有効な動きができていない。 何年も課題にしてきて、自分はとりあえずこれでいこうと決めたスタイルがあった。それは「(…

Go and Fence!

師がブログで感想を書かれていた『こころに剣士を』、1月の末に観てきた。映画を観るためというよりは、師の感想文を理解するために行ったという方が正しいけれど。 行く前に英語タイトル(『The Fencer』)を師から聞き、フェンシング(fencing)という競技…

地獄は一定すみかぞかし

武術や、武術の師や、稽古について。詩人の伊藤比呂美さんが現代語訳した『歎異抄』第二条、抜粋。念仏を稽古と読み替える。 わたしは、ひたすら念仏してアミダ仏に救われようと 法然師のいわれたことをそのまんま信じているだけで あとはなんにもありません…

『聖の青春』

前回の記事に対し、私を心配してくださる方からいくつかの親身なご意見をいただいた。ありがとうございます。 『聖の青春』という映画を観ました。早逝した天才棋士・村山聖の物語ですが、劇中で彼が声を震わせて「勝ちたいんじゃー!!」と叫ぶシーンがあり…

自殺よりは武術

20分に1人が自ら命を絶つ自殺大国、日本。衣食足りて民度も低くないのに、生きづらさを抱える人の多い国。 武術に出会う前までの私は、村上龍という作家にずいぶん勇気づけられてきた。アグレッシブな彼の著作を読むと、東の空に朝陽が昇るごとく希望が胸に…

上野千鶴子さん3

前回の記事で引用した師のツイート: 道で殴られて「社会が悪い!」と叫びながら死んでいくよりクロスカウンターで倒した方が美意識に適う。 早い話が私もそっちのが趣味に合ってる、ということなのですが、道で殴られて「社会が悪い!」と叫びながら死んで…

上野千鶴子さん2

きっかけは夏の初め、「ケンカ」の三文字に目がとまって読んだ『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(遙洋子)だった。時を同じくして旅行先で自称フェミニストの腕白中高年二人(どちらも護身術教室の生徒)から上野千鶴子賛を聞き、よくわからないが何か縁…

合気いろいろ

そりゃ月に十何回稽古に来るというのも熱心、また遠くから通うのも熱心、であるけれども私の熱心さはその熱心さと質、量ともに本質的に違う。どうしても合気を会得するのだというすさまじい執念があった。みんな考えないでただくり返しているからうまくいっ…

渡辺信之師範の演武を見て

太極拳で戦うというのは人を吹っ飛ばすことではない。傾聴と理解、情報処理能力の速度で戦うということ。 無機物である床とひとつになる、有機物(生物)である相手とひとつになる。そして力を出すというかもらうというか、自分は倒れず相手を崩す。そういう…

エビデンスにあたれ

どこかの展示室で毒キノコのいろいろ、みたいなのを見たときのこと。添えられた説明に「忘れてならないのはこれらのキノコが有毒であると判明するまでには夥しい数の先人の犠牲があったことです」みたいなことが書いてあった。フグもそうだが、そのものが人…

クウネル筋トレ稽古メモ

落ち込んだりテンパったり空元気で騒いだり、もう最近では自分の平常心というものがよく思い出せなくなっているけれど、バイトはいい勉強になっている。お山の大将で生きてきた鼻っ柱も折られたし、身がもたないから身体の使い方も工夫せざるを得ない。本格…

言葉ではわからないもの

自分の課題は、先入観がまさって他者を等身大で見られないこと。上級者にならって技の知識を仕入れたとしても、私に人を見る目(感受性)がなければ意味がないと言われる。 師「あなたは言葉と記号にすぐ騙される。こうして私が話していても私の話す言葉の内…

たぶん主客同一の話だと思う

師「生徒はお客さんなので私人だが弟子は未来の同僚、研修生なのだから公人でしかありえない。公人が '私にとっての武術とは~' というような物の見方をすること自体、ありえない」そうか・・・・ 師の「同僚」清風会・高無宝良先生「いつの時代でも人間関係…

肯心ほしいな

人間は楽しむために生まれてきた。 だから何が起きてもどこ吹く風で日常を守る技術が要る。そう教わった。 師「今の自分は自分の本体ではない。人間の本体は未来にある。ゆえに現状の自分を信頼することは未来への可能性を潰す」 私「現状の自分が信頼できな…

死ぬまでドライブ

パーツを組み立てる等の能力以前に、武術する上で私には大きな、というか決定的な問題が別にあると言い、それは「雑」ということなのである。技の稽古では手順を追うあまり相手への注意が疎かになる。強い相手には胸を借りる安心感からやはり相手への注意が…

極め技二十四手

1 仰向けにして肩までロックした腕の手指を持って手の甲側に反らせる 2 ひじを固定し手首を手のひら側に丸め込んで極める 3 うつぶせにして肩口を押さえ腕を背側に反らせる 4 うつぶせにしてオモプラッタ(手でかける) 5 うつぶせにしてオモプラッタ(足で…

武術ゆく年くる年

毎年、月ごとに「今月はどのように苦悩したか」を縷々綴るようなかたちで一年のまとめとしてきたが、今年はちょっと様子がちがう。本人にはあまり自覚がないまま、先日師より「スタートラインに立った」お墨付きを頂戴したのである。先日撮った動画が師のブ…

真綿にくるまれて

「喧嘩は相手の胸倉を掴むところから始まる・・」とその方面に詳しそうな瀬尾さんいわく、喧嘩を経験せずに大人になる男はいません(断言)。それを聞いた師も普通に頷いている。瀬尾さんは停学とか処分の気遣いのない卒業式の日に相手をボコボコにする喧嘩…

打撃対策

話の途中で終わってしまっているのだけれど、先日の金曜稽古で瀬尾さんと対打撃の話をした。 子供の組手を見ていても、素朴なスタイルであるほど人は殴ったり蹴ったりしてくる。太極拳的には受け流しつつくっつきたい訳だが、正面から間合いを詰めにいけば「…

まず肯定

「人生右肩上がり志向」のなせるわざか、自分が悪くなっているのではないか・以前の方がよかったのではないかという不安には、人を停滞させるものがある。『ART&FEAR 制作につきまとう不安との付き合い方』(D・ベイルズ、T・オーランド)という本に次のよう…

「道」と「術」

新宿スポーツセンターは改築のため11月1日から来年3月31日まで休館です。これから冬なのに稽古場所はどうなるんだろう・・。月曜日は毎週のようにスポセンに通っていたが、そんなわけで今日は家にいて考え事などしている。雨が止んだらDVDを借りに行こう。 …

同じなことは違わないこと

「同事不違」わかるような、わからないような・・? 村上龍のこんな短文を読んだ。 ・・見ず知らずの人物からの、あるいは送り主が不明のプレゼントはあまりうれしくない。中身がわからない場合はなおさらだ。封を解くのがためらわれることもある。以前、ホ…

セーフティネットとしての套路

がんばろう、ってこのブログでもよく書くけど「がんばるぞ」と「もうダメついていけない」は表裏一体だ。今のままでは、この二つの情の間を私は右往左往するだけだろう。 師「師が弟子に要求する水準は、プロフェッショナルであることです。プロの覚悟がない…

「無理」について考える

前回の記事のつづき。 何事も意識の毒汁の中に浸さずにはいられぬ憐れな悟浄よ。(中島敦『悟浄出世』) 赤ん坊は可能性を限定しない。 人間である、という実際のありようは変わらないのに、大人は、私は、ある可能性について「無理」と感じる。確信的に感じ…

「ここから抜け出す道があるはずだ」

アルコール依存症の確立された治療法は断酒、すなわち生涯にわたり一滴もお酒を口にしないことである。 大概の人はここで「お酒に近づかない」というアプローチをとるであろう。酒屋の前を通らない、酒宴を欠席する・・等々。君子危うきに近寄らずというので…

中島敦『弟子』より

子路は、孔子のお弟子さん。 弟子の中で、子路ほど孔子に叱られる者はない。子路ほど遠慮なく師に反問する者もない。 「請う。古の道を釈(す)てて由(子路)の意を行なわん。可ならんか。」などと、叱られるに決まっていることを聞いてみたり、孔子に面と…