弟子のSです

武術の稽古日誌

太極拳とは何か

太極拳はなぜゆっくり動くのか」という問いに答えるにあたり、まず「太極拳とは何か」について考えます。もう長いこと続けているのに、改めて考えたことがありませんでした。ふだん、稽古でよく言われることを列挙してみましょう。

・相手との接触点から発展させていく。かわして、くっつき、離れない。

・腰が回るのに手がついていくといったように、上半身と下半身の動きを連携させる。

・手が円を描く、体にカドを作らない、など、円が基本。

・力まかせにやらない。力に力で逆らわない。柔らかく、タコのように。

・呼吸と動作を連携させる。

・胸を緩ませて背を張る。頭は天から吊られているように。

・ひじを肩より上に上げない。 

・水の中で動作しているように、抵抗を意識しながらやる。

・柔らかいが芯が強くしなう、竹のようなイメージ。

・鼠径部を曲げ、腰の直下に重心を落とす。

・起勢でつくった勢いの波を最後まで途切れさせない。ブランデーグラスを掌で回すように、波を行ったり来たりさせる。

・床を蹴った反作用や、振り回す慣性でやらない。

・目線を先に動かし、次に重心をかけずに足を出し、最後に重心を移動する。

・攬雀尾のように、攻撃をかわし、受け流しながら相手を観察し、重心の崩れを見つけて攻める。

套路をするにあたっては、たゆたうように無心に波を味わい、波に同化して・・という一方、動きをコマ落としのように細分し、シビアに術理を意識しながら行う・・といった取り組み方もあり、進展につれ両者はだんだん一つのものになっていくと思われます。

こんなに長々と書いてしまい、どうまとめたらいいのかわかりませんが、私が、たまたま縁があったのが太極拳でよかったなと思うのは、それが、相手の戦力を無力化させるコツにあふれているからです。フィジカルが貧弱な私でもやりようによって強くなれると太極拳は思わせてくれます。私は相手に「タコを相手に戦っているようだ」と思われるようになりたい。どのような鍛錬によってそれは可能になるのか、というのが、上に挙げた内容になるかと思います。

敵と対峙するには三つの方法があると考えます。敵よりも強くなる、敵を弱くする、敵を敵でなくする。太極拳とはかわす・受け流す動きで敵を無力化する(弱くする)ことによって戦いを制していく武術だと思います。