弟子のSです

武術の稽古日誌

漢方で健康づくり

見えない脅威に怯えてるだけでは能がないので、東大の漢方市民講座というのに出かけ「東洋医学によるパラダイム転換」とうたわれた講義を聞いてくる。

東洋医学の生命観や生理学といったものは太極拳をやっている身にはわりと聞き覚えがある。

生体を恒常性を持った一つのシステムとしてとらえて、心身の不調をパーツの故障でなくシステムの破綻とみる。なので「病態をみる」のではなく「病態から病理をみる」。起きている事象から問題の本質をとらえ、破綻したシステムのネットワークを修復していくというのが漢方の考え方。だからものすごく分析の手間がかかるし、経営的にペイしない、というのでなかなか日本の医療に根付かないのだそうだ。

西洋医学がcare(対症療法)の医学であるならば、漢方はcure(治療)の医学。

病気の精査診断や外科的手術,即効性の求められる救急時や感染症のケアなどは西洋医学が圧倒的に優れているが、心身全体を健康な状態にリセットしていく(「陰陽のバランスを整える」と表現されていた)というのは東洋医学独特の考え方。両者を補完関係にしていくことがこれからの医療に必要なのではないか、というお話でした。

治療という目的のために、治療の前提と根拠をあきらかにする。うう、これを武術的アプローチと言わずして何と言おう。

しかし配られたテキストの難解さといったら「疾病を認識する過程で症状を羅列した感覚的認識より出発し、症状から病理的な問題点を抽出し、これを分析帰納して得られる病理的事象それ自体に内在する事物の関係性を把握する」こんな調子・・。けっこう寝息が聞こえてきた、東大講堂。