弟子のSです

武術の稽古日誌

昨夜のお稽古

武術90分。

今回の稽古は日本にホームステイしているという大柄なフランス人男性と3人で、だった。公用語が英語な90分だった。座り技、肘からの崩し、投げ技、推手とそこからの展開、タックルを捌く、剣術など。主要な技のあらましを時間の許すかぎり紹介した感じ。

欧米人で上背があるというと、日本人とは骨格が違う感じで、ほんとに大きくて倒すのに難儀した。私は一通りは教わっているはずなのに、できないことがいっぱい。くりかえし稽古し合える相手がほしい。

フランス人の彼は一つの動きを教わると利き手だけでなく必ず左右で稽古しようとするので、合気道の人なのかなと思ったら果たしてその通りであった。キャリアは「メニーメニーイヤーズ」だということで、師と彼の間には合気道という共通言語があり、私の合気道コンプレックスがまたもや刺激されるのだった。

合気道愛を語る彼は「自分はあまりバイオレントなのは好きじゃないんだ」と言っていた。「私もです」師がしれっと応じているのがおかしい。やりとりは全部英語なんだけど、師のあまりにも堂々とした中学英語に圧倒されてしまった。私は30代から40代にかけての6〜7年間、狂ったように英語を勉強していたのだったが、あの努力は一体何だったんだと虚しくなるような英会話がそこに展開していた。

聞き手が相手をリスペクトし、相手の発信する内容に心から興味を持っている場合にはコミュニケーションは成立するということがよくわかり、旧英語学習者として目からウロコが落ちる思いであった。それだけの魅力を持つ人物を師としたことを誇らしく思うと同時に、そんな師が少し妬ましく、苦しくもある。ちっちゃい感情。

その師に「戦うことと生きることと芸術とは等価である」はどう英訳するかと尋ねられ途方に暮れた帰り道。その後おふたりは夜の中野に消えていかれた。アデュー。