弟子のSです

武術の稽古日誌

昨日のお稽古

困ったちゃんだったヘリゲルさんはその後弓射の極意を掴んだから『弓と禅』の名著を残すことができたけど、ついに理解することなく挫折していった「ヘリゲルさん」も無数にいるはずと思う。

最近師が失恋の憂き目に遭われたようだが、「武術=師=組手」な私が組手に敗れたり挫折するたびに味わうこういう気持ちも苦しい恋のそれに近いのではなかろうか。のっぴきならない身分違いの恋とかそういう(←イメージ)。

組手。とどかない。怖い。いっそ無関心になれたら、離れられたらと思う。なのに頭から離れない。武術のほうから私を捨てることはなく、終わるとしたら私が捨てるのだとかつて師は言われた。苦しい。苦しいよ。

護身術+太極拳。物思いにうち沈みつつ、のろのろと体育館へ。師にお会いすると、今月の『秘伝』黒田鉄山先生が特集されていますよ、と教えてくださった。はい、とは答えたものの意気上がらず。

・馬歩のかたちで手を合わせて向かい合い上下動

・単鞭下勢の要領でストンと体を下に落とす稽古。落ちて片足にタックル、両手で胴にタックル、腕から相手を崩す/首裏を掴んで自分が下に落ちることで相手を引き寄せながら倒す。そこから寝返って相手の上に乗れるよう展開する。2種。

・ワンツーを薬指の張りで受ける。第一打を手首でひっかけて止め、第二打を薬指を張ったひじで止める。と、そこからの展開/双推手への応用。

相手の首裏に手を引っかけたら、相手もろともそのままストンと下に落ちるだけでいい。正しくできると相手の頭は仰向けになった自分の胸あたりに落ちる。それをまた失敗した。倒そうと相手を引き寄せてしまい、そのために勢いがついて相手の頭が私の体を越えて危うくマットに打ちつけられるところだった。当然叱られた。あれだけ真剣に叱るというのは、稽古での事故がケガする側とさせる側、両者にとって不幸な出来事だということだと思う。私は今までケガする側の気持ちしか考えていなかったかもしれない。大切な稽古相手をケガさせなくてよかった。

太極拳套路の第一段/白鶴亮翅の用法/踏ん張る相手を提手で水平に引っ張る稽古。

単鞭と左ポンの左手を直してもらう。白鶴亮翅では下げた左手と前に出した左足で、崩した相手を左側に投げるところがまだ不確か。

帰り道、人々にSさんて熱心だよねえと言われる。今回滅法ダウナーだったんだが。

そして一昼夜がすぎ、私の手元には『秘伝』の最新号があるのだった