弟子のSです

武術の稽古日誌

今日のお稽古

武術は手段と表現の研究です。気持ちをそのままぶつけるのはただの暴力です。服を掴んで引きちぎるような組手は強姦のようなものです。それは不快しか与えません。

ひとしきり泣き、反省して、護身術+太極拳+幼児空手+子供空手。

護身術ではまず丹田を動かす。左右・上下・前後。丹田を使った発勁の用法。

突きの稽古。軽く曲げた腕のひじを内に入れることで拳を外側方向に打つ。丹田を中心とした腰の回転と合わせて打つ。左右の連打と上下の連打。

伸ばした腕の拳を内旋させることできりもみ状に正面の相手を突く。相手の中段突きを受けてフックで返すより、受けから一挙動で突くので反応されにくい。

中段突き〜内旋させながら頭を横突き、の二連打。

中段突き〜内旋させながら頭を横突き〜受けの手を引きはがして頭を正面突き、の三連打。

太極拳

・足裏の二箇所(指の付け根とかかと)の重心移動を意識した套路。足裏二箇所に重心の置き所があると考えると、立っている人間は直方体のイメージで捉えられる。雲手ではその4点の重心を移動させることで家具を動かすように人を動かす。

・相手の手を握らずに吸着して操作する。双推手でも同様に、固着しないが離れないように。

なにしろひたすらくっついてれば打たれない、勝たなくても負けないと思うが、瀬尾さんに「負けないようにするだけでは防戦一方になっていつか負ける。状況にもよるが勝ちにいく意識ではいなければならないと思う」と言われて、考えさせられる。

力まない習慣づけのために参加した幼児・子供空手。しかし・・・

子供空手で、時間の最後に先生対生徒で組手した。順番待ちの列を作ってちぎってもちぎっても全力でかかってくる子供相手にだんだん疲れて余裕がなくなり、背の違いを利用して強引に制圧するという、指導的とは言い難い挙動に出た。瀬尾さんが脇で苦笑するのに気づいて我に返る。力まないどころではなかった・・。

どんどん成長する少年少女にこんな戦い方をしていたら数年も待たずに勝てなくなるだろう。「なんだかよくわからないけど柔らかくて勝ちにくいおばさん」にならないと。後年その子が稽古を続けていたとして「あの人はなんであんなに戦いにくかったんだろう?」と考えるよすがになれば、その時初めて、口下手な私が指導者っぽい役割を果たしたことにもなろう。

稽古後に約束があって都心に繰り出し、深夜一人で渋谷道玄坂を歩いていて嫌な目に遭った。

「わっ!!」と言って両手を広げた男に突然前を塞がれたのだ。驚声を上げて立ちすくんだら、仲間がどっと笑った。そのあとついても来ないし暴言もなかったから、柄の悪い男どもにすれ違いざまにからかわれたんだとわかった。なぜ平然と完ムシできなかったか、まんまと相手の思惑通りのリアクションをしたことがかえすがえすも悔しい。それに、たとえば師や瀬尾さんにだったらしなかっただろう。私だからしたのだ。悔しい。

女は弱者だから損だと思いそうになるけど、どんな生物もその属性ゆえの損や得があって、それぞれの属性を活かして護身している。女は深夜の路上では損な属性だというだけのことだ。戦いはことの起きる前から始まっていて、ことが起きた後も続くのであるからして、一人にならないとか、術中にはまってびびらないとか、嫌な気分を引きずらないとか、他の人が同じ目に遭わないようにするとか、そのときどきで最も賢くふるまうことだ。落ち込むのは賢いとは言えない。

反省材料も多いが、長女とその彼氏とおいしくご飯を食べたりして、おおむね良い一日であった。