弟子のSです

武術の稽古日誌

あちゃー・・・

父親胃がんで亡くしている私は、オリンピックのペース、4年ごとに胃カメラを飲むことにしていて、昨日がその日だった。ぶっといスパゲティを頑張って飲み込んだところ、胃壁にひとつ潰瘍ができているという。組織を採取して良性か悪性かを調べてもらうことになった。胃の検査は何度も受けているが、異状が見つかったのは初めて。これが寄る年波というやつか・・

私はけっこうな小心者だが、このとき、武術を始めて自分が少し変わったことに気づいた。異状があります、と言われてパッと心に浮かんだのは「あちゃー」・・師の言葉であった。金曜日の護身術の稽古をすぐに思い出した。起きていることについて、他人事のような距離をとること。マウントをとられて重いなあ。首を絞められて苦しいなあ。胃に潰瘍ができて嫌だなあ。慌てない、恐がらない、驚かない。

10年ほど前に乳がん検診でひっかかって精密検査を受けた時は、最終的に異状なしの結果が出るまで気分が鬱々とし、風景に薄膜がかかったような日々を送ったものだ。今、私の快食快眠はゆるぎなく保たれている。武術は「何が起ころうとも、どこ吹く風で日常を守る」術。戦時・非常時においてこそ真価を発揮すると師は仰ったが、本当にそうなんだ。私が武術に救われる機会は、きっとこれから増えていくのだろう。

欲しいものが必要なものとはかぎらない。欲しいものはなくても死なないが、必要なものは、必要であるが故に、ないと死ぬ。私の欲しいものでなく、必要なものを与えてくれる存在をけして失うまいぞと思う。(悪いところの指摘を受け、そこを直す気がないならもう稽古に来るなと師に時々言われるので)。稽古をやめたら、私はおしまいだ。

お医者さんは、まあ良性だと思うけど調べておこうね、と言った。ここ数か月で強い精神的ストレスを受けるようなことがなかったか尋ねられ、思い当たるふしは特になかったが、先々月スポセンで師からお腹に浸透勁もどきを受けたことを思い出した。

私「あのー、この潰瘍ですけど、外傷でできた可能性ってありますか」

医「ない」