弟子のSです

武術の稽古日誌

今日のお稽古

巣鴨にて子供空手。

時間前に太極拳の金鶏独立を見ていただく。右手と右足、左手と左足をセットで「缶ぽっくり」のように交互に上げるこの型は、上げる方の手足で陽の力を用い、下げる方の手足で陰の力を用いる。用法で、人を持ち上げる。

一人称オレのMくん6歳と会うのはお正月以来。春から小学生になった。「久しぶり」と声をかけられる。私「背伸びたね」M「うん、今130センチ」。おしゃべりなだけでなく、きちんとコールもレスポンスもできて賢いなあ。

空手でも全身を連動させた動きを稽古する。まず、構えた相手の両拳を腕力でなしに下に叩き落とす。次に突きをかわして腕を同じ要領で叩き落とす。それから手足の連動で、相手を引き込むのにかかとを浮かせて落とす勢いを使ったり、投げるのにかかとを支点にピボットさせたり。

かわした腕を叩き落とす稽古では、相手がピストルを持っている想定でも稽古した。Mくんから「ピストルの腕をかわすだけだと誰か他の人が撃たれちゃわない?」と質問があり、相手自身に銃口が向くような動きを考える。こういう発想ができるところが、師が彼を高く評価する点。

それから型稽古と用法。手と同じ側の足を後方に蹴り出す勢いで突く。外旋させながら伸ばした腕で相手を横向かせて脇腹を突くなど。

投げの組手と寝技の組手。型稽古に「投げの型」「寝技の型」というのがあり、Mくんはよくそれを覚えて身につけている。組手中に私は一度だけ、師にもめざとく見つけられたが、腕をたすきに抱えられて本当に投げられた。これは・・・・・・・・・・・!!

時間の最後に師とMくんとの組手をビデオ撮影して終わる。稽古後、Mくんは私について「あの先生うまくなったね」と師にコメントしたそうだ。何と言いましょうか、ありがとうございます。

外に出るとお母さんが迎えに来ておられた。巣鴨駅で通り魔事件が起き、犯人がまだ逃走中だというので・・と仰った。先生方も気をつけてくださいねと言われて別れる。八百屋さんも店先で「通り魔が出たんだってよ」とか噂してたりして町は一大事な感じである。すわ情報収集!とスマホを取り出してニュースサイトを調べようとしたところを師に止められた。「今そんなもの見てる場合ですか」私「でも状況を把握しないと」師「把握も何も状況は今のここなんだよ。次の曲がり角に刃物を持った犯人がいるんだよ。ここで電脳空間にアクセスしてどうする」私「でも」師「でもじゃない!」一喝されてやめる。一人じゃないので役割分担したつもりでした・・と弁解すると、360度見張るわけにいかないから、それなら後ろが壁とか、もう少し安全なところに身を寄せてから調べればいいでしょうと言われた。

巣鴨駅前には警官が集まっていたが規制線も貼られていず、私達がそれからどうしたかというと、普通に巣鴨で呑み食いして帰ったのだった。常在戦場とは危機感を高く保つという意味のほかに、戦場にあっても日常を保つの意でもあることが今日の師の態度でよくわかった。鳥皮チップスがおいしかった。

あとから知ったところによると、犯人は身長180センチ位で小太りの白っぽい作業着姿の男だそうである。まあ作業着を着ていようがシースルーのドレスを着ていようが刃物を持って襲ってくる人物が敵なのだから、あの場で何をおいても知るべき情報でもなかった。危機感の欠如は申し開きできない。

帰宅してテレビをつけても特にニュースにもなっていない。都内で通り魔が出ても報道されなかったりするんだ・・現代社会よ・・。