弟子のSです

武術の稽古日誌

今日のお稽古

護身術+太極拳+幼児空手+子供空手。夏休み明けの初稽古で、はりきって早めに教室に行ったら隣でバレエのレッスンをしていたのでしばらく見学する。というのも師おすすめの『昴(スバル)』『MOON』というバレエ漫画に感銘を受けていたからである。

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1コマ目の絵に影響されて基礎鍛錬の前後の羽ばたき(白桃会宣伝PVの1:40あたり)に熱が入ったりした。バレエを見てもやはり動きがきれいな人は何をしても体幹がまっすぐで安定している。「強そう」だ。他にもいろいろ美しさの秘訣がありそうで見飽きない。

師がいらっしゃったので夏休み中の質問に答えていただいてから護身術。

対向して取った手から腕をロック(ひじを曲げさせない)し、相手の肩に力が伝わるようにする。その後、塔手から手を取って攻めるパターンをいくつか。

それから五指の張りのそれぞれの用法で思いつくものを発表する。親指では頂肘、人差し指では攬雀尾のリー(引き込む動き)や十字手、中指では目突き、薬指では楼膝拗歩、小指では雲手など。套路の名称で呼ばれる用法がやはり多い。

套路では両手それぞれの指の張りの組み合わせでできている型もよくある(というか、その方が多いくらい)。白鶴亮翅もそのひとつ。用法を確認した。

套路太極拳の技の基本型だからいくら繰り返しても足りないことはないが、白桃会では、全身が連動するそれぞれの型のスターターの役目をするのが手指である。手指の張りから生まれる流れに導かれて型の動作ができる。(空手の受けや払いも同様に「腕の張り」と捉えられるかと思う。腕の動きに導かれて次の動きが、技が展開する。)

こうした「ある部位から自然に動く」癖をつけるのがなぜ大事かというと、それによって後続の動きがオートメーション化する、つまり頭を使わなくてすむようになるからだ。作業を効率化して脳の空き容量を増やすのは私の喫緊の課題だ。

つづく太極拳でも人差し指を張る用法をいくつか。前腕部をまっすぐ立てた状態で人差し指に力を入れる(張る)と手は自然に内旋し、連動させれば体幹も同方向に回転する。ターンするのにそれを利用する。玉女穿梭での方向転換や、左右分脚から振り返って座盤に移行するところなどを稽古した。

それから「立ち方」について。盤石な立ち方とは骨格が地球の中心に向かって鉛直にバランスよく積み上げられていること。それができていないと筋力を使って修整するので疲れるし不安定になる。

実際には人は小刻みに前後のゆれを修整しながら立っている。足を左右に開いてしっかり立つ(いわゆる仁王立ち)人に向かい合い、肩に触れて実際に確かめるとそれがわかる。二足で立つとは考えたらアクロバット的なことだ。構造でいえば人間は地下に基礎のない高層ビルのようなものだもの。バレエでも何でも立ち方が重要視されるのは、骨格で立つことがそれだけ鍛錬を要するということだと思う。

幼児空手ではミットを使って蹴りの稽古、投げでは首取り・手首取り・首と手首取りの三種をセットで。

「地の型」という型稽古の一段〜三段を繰り返すが、6歳児の口から「ねえどうして三段になると××が◯◯なの?」などという質問が出ると、二段と三段の内容的な差異がこの子には判別できるのか、と自分と引き比べてギョッとしてしまう。やっぱ早急に脳の空き容量をつくらなければ。

子供空手では上段受け・内受け・外受け・下段払いの用法を稽古した。相手との接触点ではぶつけずにこすることで相手の動きをコントロールしたり崩したりし、そこから技をかけていく。

突きを左手の下段払いで受け、そのまま弧を描いて相手の腕を後方に運び、崩れたところを右手の中段突きで下に落とす、といった用法は一見太極拳の楼膝拗歩に似る。二つを比較すると太極拳という武術の特徴が見えてくる。

最後に組手。今日の組手は見ている生徒にどちらが優勢か評価させるというものだった。覚え書き。

・攻守であまり目立った動きをしない子が、打たれながらも全然退かないという組手をしていた。踏ん張ってそうしているのでなく、ただなんとなく退きません、みたいな気負いのない感じで、カラフルに攻める青帯の子に対して前に出て行き、何はともあれ形勢として押している。打たれても退かないっていいな、好きだなと思った。

・1分間の組手を終えて寝転がったまま起きてこない子。内容で劣勢と判定されたが、内容は別にして、起き上がるのが遅いと「いかにも負けっぽい」という師のコメントがついた。まったくその通りだ。甲子園のマウンドでどんなピンチでもこれが地顔かと思うくらい口角が上がっている投手がいるが、彼らはそうする訓練を受けているのだろう。負けっぽくしない、というのはある意味ブラフと言えようが、弱っていることを相手に(周囲に、さらには自分に)悟らせないことが勝負事ではすごく重要だと思う。

休み中にイメトレしたオモプラッタをかけようと狙っていた瀬尾さんが今日はお休みで残念なことだった。私の動きや姿勢から、一人稽古していたのがわかると師に言われた。さもあろうと気をよくしていると「稽古してないのもわかるからね」と釘を刺される。

稽古後は鳥ふじでタイの土産話を伺う。聞いた印象で、私の中ではタイは池袋・歌舞伎町・新宿二丁目江ノ島・熱海などと同名のフォルダに保存された。旅の詳細、タイ観光に興味のある方は師のブログの本日からの記事をご覧ください。

タイ式マッサージは夏休みに私も(おふろの王様で)体験したけれど、あれを受けたらもみもみする日本式のマッサージにはもう戻れない。ふとんの上でするコンタクト・インプロビゼーションという感じだ。なんかエッチな言い回しになってしまったが。

鳥ふじで「アボカドとポテトトマトのチーズ焼き」というのを頼んだところ、しばらくして「アボカドが良くないため買いに行ってきたところそれも固いのでお出しできない」旨の説明がご主人から。わざわざ買いに行くところにプロ魂というかホスピタリティを感じた。勝手口から出て急いだんだろうなあ、と。微笑みの国もいいけど東小金井もすばらしい。師もそう再確認されたことだろう。