弟子のSです

武術の稽古日誌

稽古メモ

稽古では一見矛盾しているように思える指示を受けることが多くある。「もっと実技に集中しなさい」と「実技のことしか考えないからダメなんだ」もその一つ。これは教わった実技(個別のパーツ)をそのまま放置しておかずに、自分でつなげて術理を理解する習慣をつけないといつまでも使いものにならないということ。

指示の意図からして謎なこともしばしばだから、武術を始めてからというもの私の頭の中はモヤッとした状態がデフォルトだが、何はともあれ、バラバラのものをつなげる稽古として、先週は三十七式太極拳の型の一つ、抱虎帰山の用法を考えるという課題をこなした。

既に教わった用法を鑑みるに、抱虎帰山は野球で言えばトルネード投法のようなものである。

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ふむ、振り向く体軸の回転(水平の円運動)と振りかぶる腕の回転(上下の円運動)が一緒になって大きな力を出しているのだな! そこから次の展開を考える。師のブログの記事を参考にした。

技に対する考え方の例

・技がかかった場合と、かからなかった場合の展開を考える(連携・リカバリー)

・間合いが変った場合のやりかたを考える(遠近)

・正面向き、後ろ向きでの掛け方を考える(表裏)

・前からの掛け方と背後からの掛け方を考える(前後)

・損傷、痛み、衝撃、苦しみ、崩し、吹き飛ばし、気絶など、与える効果の変え方を考える(効果)

・無手、剣、杖など、得物を変えた場合の使い方を考える(種目)

・自分からかける場合と返し技として使う場合の違いを考える(先手後手)

・立位、座位、寝技でどう応用するかを考える(スタイル)

・使う部位を変えた場合を考える(変化)

・別の技と同時に使うことを考える(複合)

・その技が必要になる場面を考える(シチュエーション)

・その技がかかる状態の作り方を考える(戦略)

・もっと簡単な掛け方を考える(簡略化)

・より高度にすることを考える(進化)

コツがわかると芋づる式にアイディアが湧き、パズルを解くような感じでおもしろい。

個別の事象を関連付ける稽古としては他に、俳句を詠む・タロットカードの解釈・漫画のコラボ、それから落語の謎かけ(「〜とかけて何と解く?」)なども考えられるだろう。冒頭に書いた、一見矛盾しているように思える指示の要諦をつかむのも、思えばこの「関連付け」の能力があってこそだ。

武術っておもしろくてためになる。私は雑な人間で、師にも適性がないと太鼓判を押されるくらいだが、なんで武術するのか? と考えるとき、本当の本当になんでか・・というと、こういう作業の一つ一つがおもしろいから、というのが正直な思いとしてある。極私的で、胸を張って言うことでは多分ないのだけれど。