弟子のSです

武術の稽古日誌

稽古メモ

金曜稽古で、筋肉疲労をほぐすボディワークから始まり、身体を震わす動作を稽古した。

震災の時に問題になったが、水を含んだ地層が震動によって固体から液状化するという現象がある。家屋の建った土地にそれが起これば大災害だが、7割方が水分と言われる人間の身体を揺すって内部に震動を伝えると、固く凝ったものがほぐれていって・・あらあら、とってもいい気持ち。動くからぽかぽかして、心もゆるむ。

太極拳ではこの身体内部のプルプルの震動を動きに伝えていく。

・準備運動でするスワイショウでは「でんでん太鼓」のように体幹の回転が腕を連れていく(なので体幹と腕の回転は一拍ずれる)し、

・相手を両手で押す際、身体を揺すりながら押すとぐっと力が強まったり、

・震動で足を踏み鳴らすのがいわゆる「震脚」である。

小児科の医師に「薬にはファンクション(作用)しかない。効能や副作用という区分は人間の都合ですることです」と言われたことがあるが、同じく、「液状化」という現象もそれ自体では良いものでも悪いものでもなく、固体に対する一作用にすぎない。作用を「よく働かせる」ことを考えるのが、作用の専門家たる武術家の仕事。

考えると「事象には作用しかない」と言うこともできるのではなかろうか。世界はブラウン運動のように連綿と続く相互作用で、実体というよりは事象として捉えるべきものなのかもしれない。これを仏教のことばで「縁起」や「空」というのだろう。