弟子のSです

武術の稽古日誌

渡辺信之師範の演武を見て

太極拳で戦うというのは人を吹っ飛ばすことではない。傾聴と理解、情報処理能力の速度で戦うということ。 無機物である床とひとつになる、有機物(生物)である相手とひとつになる。そして力を出すというかもらうというか、自分は倒れず相手を崩す。そういうことを稽古ではひたすらやっているわけですが、お手本で師に崩されると私を含めて皆一様に「???」となる。「これはどういう力なんですか?」という質問が出る。師「こういうものだとしか言えない。言葉では説明できない」。 「???」といえば、これ。合気道の渡辺師範という方である。 https://www.youtube.com/watch?v=4rHuQiugSks 手と手の間に何が起きているのか・・・物理的な接点の有無に関係なく二人はつながって見える。今の私にわかるのは、これはマジックではない、ましてや嘲笑うべき事でもないこと。人間技で、理があること。お弟子さんにしかかからないとの指摘もあるようだが、それも含め「つながる」とはどういうことなんだろう。一体化するってどんな感じなんだろう。 合気。透明な力。師が「こういうものだとしか言えない」力。高次の傾聴と理解と情報処理能力。 こうした圧倒的な世界に対峙する件について、田島逸郎さんという社会学研究者?の方が書いておられる。この文章を読んだ時、分野は違えど、厚かましくも心の同志に出会った気がした。 ・・・彼らのやっている領域についてある程度センスがあり,彼らのアウトプットを一部でも理解でき,それを利用したり考えたりできると,その魅力に取り憑かれてしまう.その高い世界を,同じ世界を見ることはできないにせよもっと高い世界を見てみたいと思ってしまう.