弟子のSです

武術の稽古日誌

稽古メモ

弱点の左足が先週から不調なせいで、何となく全体的にテンションが下がっている。自分のテンションにかかわらず構造で戦えるようになるには、どうすればいいのだろうか。

筋力やフィジカルで人に対抗できる可能性が私の場合皆無なので、内功で聴勁化勁を鍛えるとか、体や動きの仕組みを使って強くするといった話が大好きだ。そんな私の最近のマイブームは後者の稽古の一つである「三戦立ち」だ。

ミッキーマウスのようにかかとをつけてつま先を外側に向けるのが私のデフォルトの立ち姿なのだが、外股のこの姿勢はひざに良くないのではと思い、対照的な立ち姿を作ろうと思ったのがきっかけ。

三戦立ちは沖縄空手(唐手)の基本型の一つである。拳を外旋させて外受けするとき、体幹とひじと拳とを一直線にし、さらに胸を張ることで非力な私でも結構耐えられる形になるのだが、三戦立ちはこの外受けを両手でしたような形である。足もつま先を内側に向け、全体に英字の「X」のイメージ。縮こまりつつ、ポテンシャルとしては攻撃に対して広い方向に開いた形だ。内功である站椿がリラックスした「O」のイメージなのと対照的である。

初めからXの形を作るのでなく、普通に立った姿勢から動作してその形にするので(ポテンシャルのある形とはどれもそうやって作るものだと教わった)、正しい作り方がまだわからなくて力が溜まらない。内股を締めるのにかなり鼠径部の筋肉を使うはずだ。

金曜日、稽古前に「左足に痛みがあること」「三戦立ちを稽古していること」を師に話す。

護身術では鉤突きを稽古した。鉤突きの「突く」は動線こそ弧を描いているけれど、それはジャブでなく「刺す(英語のimpale)」動きであること。腕の動線が円弧であるものを直線的な力として相手に伝えるには、腕の位置(力の作用点)は動かさず、回り込むことで体が円弧を描くように動く。力の方向によって腕を伸ばした方が構造的に強いときと、腕を曲げて体に近寄せた方が強いときとがあるが、鉤突きは後者である。

握手から合気下げの形で相手を崩す稽古もした。手とひじと体幹とを一つながりにし、しかも相手の腕もロックできていないとかからない。それに角度とタイミング。

鉤「突き」の稽古のあとは「受け」、直線の力を曲線状に受ける稽古をした。合気上げで持ち上げられないように耐える。肩で耐えていると肩を崩されてしまうが、肩(コの字型)でなく背中を丸めて(U字型)力を受けるようにすると、直線の力は作用のしどころがなく相対的に弱まる。棒状のものでボタンを押そうとするとき、その棒が湾曲しているほど力の入れ方が複雑になる、あれと同じだ。

太極拳の時間にはさらに呼吸を加え、相手を押し返す稽古をした。力の作用点は固定して吸気で胸を膨らませ(位置的には相手に近づく)、呼気とともに押し出す。力はこれも表層に作用するのでない、impale(刺す)である。

(余談だが、デモとして師はこれで私に双按をかけ、私は真後ろに吹っ飛ばされて受身を取り損ない、したたか後頭部を打った。真後ろに激しく突き飛ばされたときの受身、わりとありそうな事でもあり、課題。)

稽古後、三戦立ちに興味があるならこれも調べてみたらと「ナイファンチ」という型を教わったのでネットで見てみる。 http://karate.plus/naihanchi/

初段の動きを0.5倍速でつぶさに観察したところ、視線を先に移すこと、手技の前に足が先行すること、教わった鉤突き、引く動きで突いたり蹴ったりすること・・等々、いいことの宝庫な匂いがした。空手では套路に匹敵する重要な基本稽古らしい。

体に不調を感じると悲しく弱気になってしまうが、知らないことがまだ山のようにある。私はまだまだ大丈夫だ。