弟子のSです

武術の稽古日誌

前十字靭帯断裂その後

私は去年の11月に前十字靭帯を断裂し、再建せずに現在過ごしています。このブログに「前十字靭帯損傷」「手術」「保存」などで検索して来られる方がコンスタントにいらっしゃるので、ひざについて少しまとめておこうと思います。保存療法の情報はネットにあまり載ってませんし。

私は受傷2か月後にMRIで靭帯断裂がわかり、それから保存療法にすると本当に心が決まるまで5か月かかりました。手術しないと決心できたのは、直接的には、信頼できるひざ専門の医師の助言によります。私には現状でひざ崩れが起きていません。将来起きたら仕方ないのでその時は手術を含めて善後策を考えるとして、当面は無理のない範囲でどんどん動かしていきなさいと言われました。今は理学療法士さんの指導のもとでリハビリを続けながら、何か月かごとに医師に診てもらうということで安定しています。

前十字靭帯自体は傷つけても痛みが出ないので痛みは問題になりません(そこが半月板損傷や他のひざ疾患と違うところ)。問題は大腿骨と脛骨のつなぎが失われることによる不安定性と、不安定性がこうじてひざ崩れが起きた場合です。なぜかというと、ひざ崩れは日常生活に支障をきたしますし、繰り返すことで関節の二次損傷が進み、半月板損傷や変形性膝関節症など痛みの出る疾患につながるからです。

なので現在の生活上の主な注意は、ひざ崩れが今後も起きないようにすることです。具体的にはリハビリでひざ周囲と体幹の筋力を強化することと、ひざ関節に負担をかける動きのクセを直すことをやっています。私の稽古している武術が、自然の理に従うこと、それを阻むような動きのクセをなくすという方向性のものなので、リハビリがよい稽古に、稽古がよいリハビリになっていると思います(組手については取り組み方が喫緊の課題なのですが、それはさておき・・)。太極拳なども上達すればするほど関節に優しくなっていきますし。

ケガ以来、踏ん張る・重いもの(=人)を蹴るなどの動作が難しくなりましたが、武術というものがそもそも「手持ちのカードで戦う」「自分の体の使い方のコツを知る」という性質のものなので、ここからが武術の出番、というような感じで稽古しています。でも、こんなふうにすまして書けるようになるまであきれるほど迷いました。今は気持ちがふっ切れたので楽です。いつ異変が起きても相談できる医療機関を確保して、悔いのないように毎日過ごすことが大切かと思います。

私が主治医と決めた、その医師がみている最高齢の前十字靭帯損傷の患者さんは競技スキーをしている70代の女性だそうです。私と同様、保存で経過観察しながらスキーを続けているとのこと。スラロームというのができなくなり、競うという点では思うようにいかなくなったけれども、好きなことをやれている。そうかと思うと、リハビリ施設の医師からは還暦を過ぎて再建した人もいると聞きました。若者と違い中高年は人生の持ち時間が少ないので、どの選択も貴重に思われます。

決められずにいる方には、ジタバタしていればそのうち自然とどちらかの方向に転がっていきますよとお伝えしたいです。待ってくれる周囲に感謝しつつ、事情の許す限り、気のすむまで決定を先延ばしにしてみてはいかがでしょうか。おわり