弟子のSです

武術の稽古日誌

今日のお稽古

護身術+太極拳。護身術のテーマは「蓄積」であった。

元気を100として、それが90、80・・と下がっていくような戦い方はよくない。日常生活でも減る元気と回復できる元気のバランスが取れていることが大事だが、攻防においても、なるべく赤字を出さず(マイナスを蓄積せず)、プラマイゼロの現状維持ができるようにする。100を100でキープするのと、80になったものを100に持ち直すのとでは後者の方がずっと大変だからだ。

マウントをとられても、首を絞められても、慌てない。がむしゃらに回避しようとしない。それをやると元気が消耗する。乗られてただ重いだけ、絞められてただ苦しいだけ、というような認識でいること。そして死なない程度に回避する。そのくらいの温度でやっているうちに、攻め続ける相手の方にマイナスが蓄積してくる、つまりくたびれてくる。

死なない程度に回避する、その具体的なテクニックを「武術」と呼ぶのであろう。

・首を絞められても、致命的な部分だけは指を入れて弛める。

・相手と調子を合わせて一体化する。

・または力でもって投げに来ても脱力してかわす。

またプラスを稼ぐために、有利な形勢をとることも。

・単推手ではインサイドが有利

・双推手では上にかぶさるのが有利

・足も使った攻防では裏に回り込むのが有利

現状維持というのは何もしないでいることではなく、「マイナスを蓄積せず、プラスを稼ぐ」という具体的な作業を、各瞬間において細かく・丁寧に・延々と続けて初めて得られるものなのだと思った。

太極拳では套路の第一段、起勢から十字手まで。太極拳の動きは「利益は求めないが損益は作らない」、100で元気をキープすることの体現である。循環、一体化、連関。陰陽太極図そのものだ。

今日は相手を引き寄せる動きを重点的にやった。具体的には提手から靠へ移行するところと、単鞭の引き込むところ。それから進歩搬攔捶と如封似閉の用法。

自分の身体の一体化、相手の身体の一体化、自分と相手との一体化・・・キーワードの「一体化」について生徒に説明を求められた師は、江戸前寿司を例にとって説明された。いわく「ネタとシャリがちゃんとくっついてる感じです」。一体化しているから食べられますけど、ばらばらだとうまく食べられませんよね・・と。釈然としないまま頷かされてしまうのが、師の話術の真骨頂だ。