弟子のSです

武術の稽古日誌

稽古メモ

昨日の稽古で、剣術の動きを利用した力の出し方をやった。剣道の「叩く」刀使いと違い、剣術の(つまり日本刀の)刀使いは柄の方向に「スライドさせる」。稽古では自己の他者化・身体の道具化ということをよく言われるが、刀を持った腕〜肩〜背中をひとつながりに道具化し、尻文字を描くように(←Sの解釈です)腰を中心とした体幹でコントロールして斬る。

両手で握った刃物を腰でスライドさせるイメージを、徒手の動きに反映する。足を開いて立つ相手の肩口を手で押して横に動かす稽古をした。仁王立ちした人間を腕力だけで横に動かすのは難しいが、刀の柄をはっしと握り、相手の肩口に水平に当てたイメージで腰から駆動すると動かせる。おお、センスオブワンダー! イメージの力ってすごい。

イメージで刀を握る。滑車を引き上げる。腕をつっかい棒として頼る。緩衝材として相手に当てる・・。武術とは代用品的なものだと師は仰ったが、「代用品」「身体の道具化」とは、自己身体についての認識の変革に他ならない。(余談だが、娘が小さい頃、長い距離を歩かねばならない時に「腰から下を乗り物だと思って、自分はそれに載せてもらって運ばれるんだと思ってごらん」と言って、娘と二人「足さん連れてって〜」と言いながら歩いたことがあったっけ・・。あれも思えば道具化だったな。)

速く移動したいと望んだ人間が、足の代用品として自転車を、クルマを考え出した。人間は自ら考え出した代用品によって所与の能力を上回ることができる。ハンデを飛躍に繋げることができる(関連する師の記事はこちらをご覧ください)。このことは障害や老いの問題を考える上でもとても重要だと思う。

手だけの力で動かそうとしない、を説明するのに、師は体を軍隊に見立て、手という兵一人に攻めさせるのでなく、軍全体を集め、後輪駆動で動かす、と仰った。前回の双按の稽古で、力の作用点は固定して相手に体幹を近寄せ、その位置から押し出すというのをやったが、それにも関連することだ。軍全体で後輪駆動で、は、靠(カオ)にもつながる。

片手一刀や二刀の剣術は太極拳と親和性が高いということなので、今後の稽古が楽しみだ。