弟子のSです

武術の稽古日誌

サードウェーブきました

2009年に太極拳を、数年後に武術を習い始め、2012年の稽古中にひざに大きな怪我をした。前十字靭帯を切ってしまったのだ。
歩いていてもがくっとひざが抜けて転んでしまうような状態で、当時は師を灯台に暗中模索するような毎日だったから、私は松葉杖でおろおろするばかりで、それでも稽古は休まず通っていた。

そのとき師に言われた言葉が「あなたの武術は今が始まり」。どうしよう、終わりなんだろうか、終わりたくない、と私は切羽詰まった気持ちでいるのに、師は終わるどころか「始まり」と仰る。「組手だってできているじゃないか」と。思い返してもどうやっていたのか謎だが、師の指導のもと、確かに組手もやっていた。

再建手術を受けるかどうかで数か月迷い、リハビリと並行していくつかの病院を巡った末、保存療法を選ぶ(手術しない)ことにした。MRIの所見で全断裂と言われたが、実は見えないところに靭帯が残っていたのか、不安定ななりに「低値安定」してその後何年も過ごすことができた。

あの事故がなかったら、師のいう「武術」がどういうものか本当にはわからずにいたと思うので、いまや私の中では完全にポジティブな出来事に仕分けされている。

そして先日のことだが、稽古中に再び同じひざに怪我をして近所の整形外科にかかり、レントゲンで「捻挫(靭帯損傷)」と診断された。もっともレントゲンでは靭帯の状態はわからないので、「怪我によるダメージは骨には無い」のがわかったということである。

それより、骨の状態を見て指摘されたのは、関節周囲の軟骨のすり減りと、骨棘(骨が変形してトゲのように尖ること)があることだった。いわゆる「変形性膝関節症」である。これははっきりと

加齢

によるものだ。私はもともと関節がゆるく、そうした変化の影響を受けやすい、つまり痛みの出やすいひざであるらしい。
確かに、ただの怪我なら回復に伴い痛みが減っていくはずなのに、今回は思ったように治らない。少し運動をなまけていると痛みがぶり返す。ぶり返すならまだいいが、受傷当日より増悪してたりする。

参考:変形性膝関節症(Wikipedia

日本国内に限っても患者数は約700万人というありふれた疾患であり、年だからとあきらめたり、我慢しているケースが多いのもこの病気の特徴で、行動が制限されがちになるため、適切なケアが望まれる。

症状は人によって差異が見られるが、一般的には初期段階で、階段の昇降時や歩き始めに痛んだり、正座やしゃがむ姿勢がつらくなる。病気の進行とともに、起床時の膝のこわばりや、関節が炎症を起こす、「水がたまる」と表現される膝関節液の過剰滞留などの症状が出やすくなる。さらに進行すると、大腿骨と脛骨が直接こすれることで激しい痛みが生じ、やがて歩行困難となる。
40歳以上の男女の6割が罹患しているというデータもある。また、どの年代でも女性が男性に比べて1.5-2倍多く、高齢者では男性の4倍といわれている。O脚の関連も指摘されている。加齢とともに発症しやすく、中高年の女性に多くみられる。

関節リウマチや膝の外傷などが原因となることがある。中でも、前十字靭帯を断裂したことのある人はそうでない人に比べ、将来的に変形性膝関節症を発症するリスクが3.62倍になるという調査結果も示されている。これは前十字靭帯を再建する手術を受けた場合の数値であり、手術を受けず保存的に治療を行った場合、リスクは4.98倍にまで上昇する。

 私、どこから見てもハイリスクの人だ・・。

今回の怪我を契機に、これからは「加齢」つまり身体の経年劣化について考えることが増えるだろうと思った。事故や天災に遭わなくても(「遭わないから」というべきか)やってくる、体の不具合や病気といった生体の変化に支配されない人間になりたい。平均寿命が90歳に近づこうという日本である。後世に役立つかどうかはともかく、一つの参考例にはなるだろう。師はまだお若いし、私だからできることとも言える。

昨日、武術用の杖をまさに杖として使い、痛むひざをようよう運んで道場に辿り着いた。これでは到底稽古にならないだろうと思うのに、やはり始めてしまえば稽古はできるのだ。なんというか、自分の仕事は「道場まで体を運ぶこと」だけって気がする。とくに耐えるでもなくふだん通りに稽古し、仕上げに演武まで。

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夏至でした

というわけで、私は自分に「あなたの武術はもういちど今が始まり」と話しかけてやっている。こういう言葉かけを師を待たずに自分でできるようになったところが、前回との違いと言えば言えるかも。