弟子のSです

武術の稽古日誌

遠隔稽古

太極拳教室の再開がいつになるのかの見通しも立たぬまま、家で套路(とっても気持ちいい)と、オンラインレッスンの課題にとりくむ日々。実地の稽古であればタッチやニュアンスといったものから学ぶことができ、間違いもその場で指摘され直してもらえるのにと色々もどかしい。

よもやこんな事があるとは想像もしていなかったが、このたび通信講座で「猴拳(こうけん)」を学んだ。「猴」とはおサルさんの意。緊急事態宣言が出る前に一度だけ稽古で教わっていたので、その記憶を頼りに、動画でチェックしながら定着に励む。

なんとか定着にこぎつけた動きを自撮りして師のもとへ送ると、ダメ出しが戻ってきて要修正となるのだった。簡潔なアドバイスによしわかった!と送り直しても、今度こそ!と送り直しても要修正だ。師の目の付け所は「完成形との比較で何が欠けているか」でなく「稽古の方向性が合っているかどうか」なので、NGを反映させる作業はどちらかというとインストール(何かを足す)よりはアンインストール(何かを引く、やり直す)になる。それをしないと間違った方向に稽古し続けることになるから、いただいたNGは「直せませんでした」では済まない。できるできないはともかく、どこに向かって進むのか、何をしようとしているか、は絶対理解していないといけない。

求められていることがわかるほどに、自分でも「できてない」「こうじゃない」と不満が高まる。猴拳は腕を拘縮させ、手首の回旋に体幹を連動させていくのだが、套路でその動きにあたる双按がそもそもできていなかったことに気づく。しかし不思議なことに、できたと思って見せる動きはNGに継ぐNGだったのに、できてる気がしない動きは「良くなった」と言われるのだった。「できた気」より「できてる気がしない」方が、客観的な状態としてはましなのかもしれない。

そんなこんなで猴拳は、師に成果を認められるまで、初見から1ヶ月以上かかってしまった。「成果」の二文字にああうれしいなあと達成感に浸る間もなく、次のお題は「蛇拳」だ。蛇拳。これは実地で教わったことが一度もなく、掛け値なしの初見である。YouTubeの動画と解説だけを頼りに稽古を進めることになる。冒頭の話に戻れば、今まで長いこと情報量の豊富な実地の稽古を通して学んできたけれど、通信講座では制約があるぶん、手持ちの既知の情報や想像力を動員しないといけない。なんだか大変なことになってしまったが、今はそういう学び方を経験する巡り合わせなのだと思うことにする。

師のブログの記事へのリンク:
第一回通信講座 Sさん猴拳
http://doranekodoradora.blog123.fc2.com/blog-entry-504.html
第二回通信講座 Sさん猴拳リターンズ
http://doranekodoradora.blog123.fc2.com/blog-entry-505.html