弟子のSです

武術の稽古日誌

兵法の構え

身のなり、顔はうつむかず、余りあをのかず、肩はさゝず、ひずまず、胸を出さずして、腹を出し、こしをかがめず、ひざをかためず、身を真向きにして、はたばり広く見する物也。(宮本武蔵『兵法三十五箇条』) (姿勢は顔をうつむけず、あまり仰向かず、肩は張らず、歪めず、胸を出さずして腹を出し、腰を曲げず、ひざを固めず、体を正対させ、体を広く自分を大きく見えるようにするものである。) 「ひざをかためず」・・兵法(武術)の姿勢とは本来、ひざにやさしいものなのだ。ひざの力を抜いて、すべるように地面と接触する。地面を蹴って動かない。 反発・反作用の原理によって動くのをやめること。 何度も靭帯断裂に見舞われているブラジルのサッカー選手、ロナウドなどは一説によると、地面を蹴る力が強すぎてひざの方がやられた、ということになっています。すごっ。 しかし武術はそうした、反発する勢いや筋力にまかせたパワーを第一義としない。「武術はスポーツとは性質の異なるもの」と師が言われる理由の一つはそれだと思います。 太極拳にしても、パワーやスピードとはまさしく無縁。今教わりつつあり、私を煙に巻いている合気も多分そう。それで強い人は強いのです。武術って本当に何なんでしょう。 私は切実にこの問いへの答えがほしい。「太極拳はなぜ、ゆっくりした動きが有効なのだろう?」 そしてそれは本当に、佐川幸義先生いうところの「正しくやる事」さえ稽古で心がけていれば得られる「有効さ」なのだろうか?反発する勢いや筋力にまかせたパワーを突き詰めたあとに、初めて見えてくる境地なのではないか?師がやたら屈強なタイプなので、疑り深くなってしまうのです。