弟子のSです

武術の稽古日誌

今日のお稽古

小金井体育館での体験講座「中高年のための太極拳」に夫を伴って参加する。参加者20名(Sのカウントによる)という大盛況で、道場が人で埋まっている。ウォーキングナントカにエントリー中の私達はもちろん徒歩で体育館に向かい、あやうく遅刻しかけた。師と瀬尾さんに夫を紹介する。

まず準備運動。足の方向づけによる自然な身体の転換(自力で動かない)/五指をそれぞれ張り、そこから腕や体全体が連動する感覚を味わう/スワイショウによって腕の振りが腰の回転を誘導し、腰の回転が腕の振りを誘導するという、末端と根幹が恊働する感覚を味わう。

そこから套路のいくつかの型の要点を体験した。起勢(手の重さを伝える)、単鞭(転換・引き込み)、楼膝拗歩(前進・押し出し)、倒輦猴(後退・手ほどき)。

では二人一組でやってみてくださいと言われて夫とペアを組む。こんなふうにあらたまって向かい合うのは三三九度以来かもしれない。向かい合って手に触れるって、考えたらえらく親密な行為だよなあ。手の重さを伝える拳落としを夫にしてみせたら、おっと驚いていた。瓶詰めのフタ開けてーと頼みにくる人間にしてはやるなあと思っただろう。

師が瀬尾さんを相手に用法を見せ、発勁により瀬尾さんがのけぞると周りからどよめきが起こった。太極拳に健康体操のイメージを抱いて来られる人は、武術としての側面を知って驚くのだろう。多くの方に面白く思っていただいたようだ。

夫は指を「張る」の意味がわからないとずっと首を捻っていた。初心者のリアクションはなかなか知る機会がないのでこちらも勉強になった。製作途中の太極拳本に活かせると思う。

金曜日の3時から太極拳教室やってます、その時間の前には護身術教室もあります、どうぞよろしく、ということで1時間の講座は終わった。

終了後、師が夫に挨拶してくださった。「既婚者であるSさんを何かと連れ回してご心配なこともあるかと思いますが、趣旨をご理解いただきたいと思います」みたいな、とても礼儀正しい物言いで、夫に向かって私のことを褒めてもくれた。思いもよらない褒め言葉にどぎまぎした。夫はそれを受け「この歳でこれだけ打ち込めることがあるのは素晴しいと思うのでよろしくお願いします」。

師は夫に、太極拳は勝ち負けを競うものではないこと、何もしないでいる、それを楽しむということをやっているため稽古は遊んでいるようにしか見えないこともあると説明した。すると夫は「確かに妻は少し好戦的なところがあります」と、これも意外なことを言い出すのだった。師「そうです。勝ち負けにこだわるところが彼女の課題です」。

あとで夫に発言の真意を問いただ・・否、尋ねると、「稽古相手と自分を比べて家でよく落ち込んでるから、せっかくやってるんだから楽しめるようになればいいのにと思って」と言った。

師については「君の話から亀田興毅みたいな(!?)武闘派をイメージしていて、生活のためにやむなく人に教えてる感じなのかと思ったらそうじゃなかった。教えるのが本業みたいな人なんだね」。