弟子のSです

武術の稽古日誌

「ここから抜け出す道があるはずだ」

アルコール依存症の確立された治療法は断酒、すなわち生涯にわたり一滴もお酒を口にしないことである。 大概の人はここで「お酒に近づかない」というアプローチをとるであろう。酒屋の前を通らない、酒宴を欠席する・・等々。君子危うきに近寄らずというのでお酒を危険物扱いし、日常が我慢と不自由の連続、つらい戦いである。しかし師によれば、それは「お酒を呑む人」が「目の前にお酒がない状況」に依存しているにすぎない。 お酒からの本当の自立、断酒とはお酒に近づかないことではなく、言おう、目の前にあるそれに手を出さないことだ。「お酒を呑まない人」としてお酒を呑まない人の振舞いをすることだ。本来呑まないのだから、呑みたいと思う方が一過性なのである。 依存症の本人や彼らに関わる人々はこれを無理と断言するだろう。私も無理だと、百歩譲って、極めて難しいと思う。しかし、しかし、そうなれたらどんなに素晴らしいだろう。そこに立って見えるのはどんな風景だろう。私の依存対象はアルコールじゃないけど、がんばろう・・・・・ と言いそうになるけれど、できない時にさらにがんばるのは無策と同じ。根底から発想を変えることが求められている。「パソコンを買い換えろってことだよ」。 表題はボブ・ディラン見張り塔からずっと』。